先日現調でお邪魔した現場のお隣で、放置され朽ち果てかけた蔵(土蔵)を発見しました。
蔵独特の土壁を保護すると同時に外壁化粧の役割も兼ねた漆喰が剥げ落ちた後、長いこと風雨にさらされていたと見えて、至る所に大きなクラックが入っておりました。
しかしこの蔵を造る材料の土、実は日本の気候風土に非常に良く合い、また私達の周りに無尽蔵に存在する為、民家の壁材として最近まで使い続けられてきた歴史があります。
この土に藁スサを混ぜ時間をかけて発酵させて、竹で組んだ下地(小舞)に塗り込み、民家の外壁や間仕切り壁を造ってきました。
この土壁の代表作がこの蔵の土蔵であります。
また民家は壁厚が薄いため、下地の小舞竹を立てに細かく割って組みますが、この様な蔵の壁は火災の火や盗難または内部の湿度調整の為に厚く練り固めます。
その厚い土の重量に持ちこたえる為竹を割らず一本そのまま使い、縄を使い縦横に組みます。
その為、最近まで竹材は重要な建築材料であり、以前は何処の町にも竹屋さんがありました。
またこのような蔵はその家の格式の高さの象徴でもあり、蔵の正面にはその家の家紋を漆喰で左官職人が鏝画を描き出すなど当時の左官技術の高さを垣間見ることも出来ます。
この蔵(土蔵)今では多分、本格的な小舞を組む職人さんや土蔵扉を造る職人さんがいないのではないかと思います。
この土壁のように文化としていずれ消え失せる運命にある貴重なこの蔵の存在をよく理解していただくよう、啓蒙活動も同時に進めるべきと思い、先ずはこの蔵の所有者のお施主様に蔵の重要性をお話しいたしました。