自宅の冠木門と塀の移築工事がほぼ完成し、先日薪造りイベントの折に参加者の皆様に披露する事が出来ました。
冠木門は100年以上経過の名古屋市内の老舗の旧油問屋さんの解体現場から、塀は地元の豪商の旧家から同じように解体処分の運命から辛うじて救い出す事が出来ました。そして貰い手を探す中、縁あって私の自宅に建築人生の生き様のシンボルとして移築する事に致しました。
骨組みの木材の古材から古瓦まで、一つとして忠実に捨てるところが無いように使い回し施工いたしました。
基礎の束石は他の解体現場から頂いた御影石の束石を、そして玄関周りの床の敷石も、他の解体現場の庭石を使用しました。同じく照明も同じように解体現場から救い出した器具を使用し、新しく買い入れたのは敷石の黒の御影石のピンコロのみであります。
このように幾つかの違う現場から持ち寄り組み合わせる事により古い門と塀の合体が可能になりました。
私の長い建築人生の中で学び経験した多くの知識の中から最終的に新しく生まれ、私の心の想いの中で育ち、最後に辿り着き生き残った価値観の建築を私なりに一言で言い表すと「老舗建築」とでも言えるかもしれません。
長い歴史の中で多くの人の手で使いこなされ、使いまわされた傷や欠けやへこみ等が劣化現象でなく、時間の良き経過の現れとして受け取ることにより、このものの(建築も含め)ライバルは有形なものでなく無形な時間のみであるのではなかろうか、そしてこのように考えることにより、古材・古民家を扱う建築の世界は競争やライバルのいない舞台となり、新材、商材カタログ、未使用材の様な一般建築では決して出来ない一味違った世界が構築できるのではないかと考えています。
新しい建築物の宿命である時間経過につれての劣化・下降現象でなく、経過を逆手に取り「おもむき」としての価値の上昇を味方に付けての建築手法が、私の建築人生を賭けて辿り着いた最後の着地点かと一人心の奥深くで想う今日この頃であります。