浜名湖の湖畔で只今改修中の蔵(土蔵)の両開きの土扉、実は先に閉める女戸と後に閉め重なる男戸からなっております。

また土扉の周囲は、容易に火が室内に入り込まないように扉の枠の段を三段ほど付けてあり、その中央に引き手の金物が付けてあります。

しかしこの土蔵、だいぶ長い時間放置されていたとみえて、漆喰の剥がれや傷みが随所に見受けられました。

 

 予算の関係もありますが、少しでもこの貴重な文化的で再建する事が不可能に近いこの土蔵も、今であればまだ私共の力で修復できる範囲であると思われます。

しかし、この土蔵の土扉に描かれた左官鏝絵だけは今の左官技術で修復する事が出来ないのが現状かと思われます。

また最近は土蔵を修復する事や所有する事で、左官仕事に今まで以上に興味がわいてまいりました。

この外壁の厚い土壁とその下地の太く頑丈な竹小舞、土扉に鏝絵、と今の左官職人の技術では一度壊してしまえば再建は先ず不可能と思われます。

そんな鏝絵がこの現場には存在しておりました。人目に触れず、ただただ朽ち果ててゆく運命であったこの土扉の鏝絵。

この鏝絵が残る土蔵を、このほど若いお施主様の要望で修復する事が出来、大変嬉しくまたこの様な住文化に携わる仕事を頼まれた事を名誉に思っております。

 

私も若い頃一度だけ訪ねた事があります。鏝絵と呼ばれるこの技法の名工として、江戸時代から明治時代にかけて活躍した入江長八の長八美術館。静岡県伊豆松崎にあります。