現在進行中の物件に「曳家(ひきや)工事」と呼ばれる建築業界では死語に成ってしまったような分野の仕事が存在しています。
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私が子どもの頃、大工の親父の周りには車力(しゃりき)と呼ばれる職人集団が多くおりました。彼らは家の解体工事から始まり、とび職、基礎、土工事から木舞(竹を編み家の壁である土壁の下地を造る)荒壁の土壁塗り(赤土とわらを混ぜ発酵させて造った土)瓦葺き工事、建ったままの状態での家の水平垂直移動や建て起こし(傾いた家を元の状態に直す工事)など大工職以外の工事を受け持っておりましたが、どこの村(集落)にも体力と気力に満ち溢れた元気の良いこうした若い職人集団が一組二組は存在しておりました。

s-DSCN1959盛り上がった筋肉の職人さんが「はっぴ」をまとい風になびかせながら歩く姿は村のどの子も憧れたものであります。
しかしながら、現在は高度な技術と能力と体力を持ち合わせた曳家職人が、この東三河地方でもわずかにしか存在していない事実に時代の変化を感じます。
そのような時代だからこそ、建築を志した者の使命として住文化の継承に取り組み、最先端技術のハイテク部分と伝統的なローテク部分をバランスを取り、未来の子ども達にも理解してもらえるようにデザインにも配慮しつつ、気候風土に根付いた家造りに今以上に邁進すべきだと思い、曳家さんの夏用のユニホームのはっぴ姿に昔の子どもの頃にもどり一人惚れ込む暑い夏のひと時でありました。