協会の想い
古い民家を訪れたことがありますか。
時代の流れの中で失われつつある古民家の静寂な空間に一歩足を踏み入れたとき、農耕民族の平和的な日本人に脈々と受け継がれてきたDNAが騒ぎはじめると感じるのは私だけではないのではないでしょうか?
高度経済成長期に、新しいもの、品質が均一なもの、大量生産できるものがもてはやされるようになり、時代の流れの中で、日本の伝統的な暮らしの文化を映す「民家」は置き去りになってきました。かつては当たり前だった、地元の材を使った地産地消、地域の相互扶助で家づくりを行っていた“結”の文化、自然に返る素材を使用したゴミにならない家づくり、役目を終えた民家から次の世代への構造材のリサイクル、棟梁の技の継承、全てが現代社会で忘れ去られた、日本の古き良き暮らしの文化を映しています。
大量生産・大量消費・大量廃棄が日常となった現代。リサイクルできないような化学建材が一般的となり、ごみ問題や健康問題が顕在化しています。ここ数年で、「古民家」という言葉が随分市民権を得るようになり、「古民家再生」のニーズが高まっていますが、これは現代社会の在り方に行き詰まりを感じている人々の、かつての暮らしの在り方への原点回帰を望む心の声なのではないでしょうか。
私が一般社団法人愛知県古民家再生協会を立ち上げて早8年。近年の古民家ブームに、喜ばしい気持ちもありつつ、ブームに便乗し、せっかくの立派な構造体を化学建材で囲うような、名ばかりの古民家再生を謳う、消費された古民家も沢山あるのを見てきました。
古民家再生には正しい知識と、確かな技術が必要です。
また、新築以上に手間もコストもかかる古民家再生。ただ情熱だけで守り、再生させるだけではなく、その活かし方、そしてつないでいく未来まで考えなければいけない時代が来ていると感じます。
守り・活かし・つなぐ
これが、私が目指す古民家再生の姿です。
「古民家」を、ただ消費されるブームで終わらせないよう、古民家を通じて先人の知恵を学び、美しい日本の風景を守り、消費の在り方、廃れ行く地域の在り方を共に考え、文化を紡ぎ、未来に残すべき技を受け継いでいく。それが一般社団法人愛知県古民家再生協会の使命だと思っています。
すべては未来の子どもたちのために。
代表理事 戸田 由信